全ての居酒屋はトイレの中に大きな鏡を置くな

ない文章力を振り絞って恋と退屈について書きます

拝啓俺

拝啓俺へ、正しくは今の俺になるはずの俺へ。

まずひとつ言わせて欲しい、君はプロ野球選手にはなれない。甲子園にも行けない。

スターじゃない。君は通行人Fくらいの存在でしかない。受け入れられないだろう。

でもそうなんだ。街の景色の一部にしかなれないんだよ。

今の俺が思うに普通に生きるということは、景色になるということなんだと思う。

溶け込んで、日常という景色の1部になることだと思うんだ。そのうち君もその日常を平気な顔して過ごすことができるようになるよ。

君は今確実にスターになると信じているね。

自分が東京ドームで活躍している姿を信じて疑わない。君がしている心配はプロ野球選手になれなかったらどうしようではなく、読売ジャイアンツから指名されなかったらどうしようという心配だったよね。

それに比べて今の俺は、明日の生活のこと、奨学金や家賃光熱費、

友達に何気なく言った言葉が傷つけてしまってないか、周りから笑われていないか、そればっかり心配しているよ。

あのころみたいな心配はもう出来ないよ。

もしこの文をあの頃の俺が読んだら不貞腐れて野球の練習をするのを辞めてしまうだろうか、それともなにくそと野球の練習をもっと頑張っているだろうか。

少なくとも今の俺ならやめている、間違いない。でもあの頃のエネルギーを持っている君なら頑張れるかもしれないよ。どうかプロ野球選手になってくれよな。

あの頃の俺は本気で自分が世界を変えると思ってたし、自分の言動の一つ一つが誰かの心に大きく響くと思っていた。

そんなはずがない、自分は自分が思っているより小さい存在だ。誰かに影響を及ぼすなんてことは無い。そんなことすらわかってない頃の自分の方がなぜだかまっすぐな気がする。

今じゃ絶対言えないような真っ直ぐな熱い言葉もあの頃は平気で言えていた。

今はもうひねくれてしまって、このように何が伝えたいのかよく分からない文章をつらつらと書くことしか出来なくなってしまっているよ。

情けないなぁ。君の思うヒーローにも、君の思うスターにも、君の思う大人にもなれないまま身長だけ伸びてしまったよ。君が思っているより大人は大きいだけだよ。俺も君から見たら大人なのかな。そうなれるようにしなきゃ