全ての居酒屋はトイレの中に大きな鏡を置くな

ない文章力を振り絞って恋と退屈について書きます

卒業の詩

高校の卒業式の後、俺は浮き足立っていた。

俺は総合学科の学校に通っていたため文系、理系、工業、ビジネスと学科があった。俺は工業クラスだったのでほぼ男しかいなかった。逆に隣のクラスはビジネスクラス。女の花園だった。そのクラスにいた一人の女の子のことをずっと可愛いと思っていた。俺は親衛隊をこっそり結成していた。誰も入ってくれなかった。

話は変わるが俺の所属していた野球部は陽キャ集団だった。たった一人を除いて。それが俺である。ただ周りが陽キャだったおかげでそれなりにその子と話す機会はあった。しかしちゃんとした会話をする機会もなく俺の高校生活が終わろうとしていた。ただ俺は残さなくては行けない。その子と会話した証拠を、その子と知り合いであったという証拠を。

ここで俺にミッションを課した。

それがあの子と写真を撮れ!!!!である。

しかし俺から声をかけられるわけが無い。実はその前の失恋のショックで俺は好み女性と目を合わせることが出来なくて、目が泳いでしまうし、「あっ」が会話の所々に挟まれてしまう。

今は大丈夫、可愛い女の子とも目を合わせられます。ただ会話に「あっ」は未だに挟んじゃうんですけど。

つまり俺に残された道は、あの子から写真を撮ろうと声をかけられること。これしか無かった。無謀な賭けだろう。ただ俺には確信があった。俺は多分あの子に面白いと思われている。

根拠の無い自信である。思えば俺が周りにウケた事なんか、学園祭のクラスCMで野々村竜太郎の真似をした時くらいである。あの時の栄光を引きずっているだけの文化祭の遺物であった。それでもその時の俺は自信があった。

あとはやることはただ1つ。その子の教室の前をめちゃくちゃ往復する。偶然を装って。めちゃくちゃずっと往復するのだ。声をかけられるまで。幸い俺のクラスは学校に思い入れがあるやつなんか一人もいなかったので卒業式が終わって他のクラスはみんな教室で別れを惜しんだり、卒業アルバムにメッセージを書いたりしていたが俺らのクラスは速攻で誰もいなくなった。なんなら普段よりもかなり早く教室の鍵が閉まった。だから俺も教室に留まることなくあの子と写真を撮ることに集中できる。あとは往復するだけ、無駄に大きな声で会話して存在をアピールするのだ。俺はここにいるよ!!!今がチャンスだ!!!!写真を撮ろうよ!!!!写真を!!!!ねえ!!!!!!!

結論から言おう。撮れた、ヤバくない?。無駄に大きな声も出したし、あえて近くをめちゃくちゃ通った。そしたら撮れた、撮ろって、俺の名前を君付けで呼んで、撮ろって言ってくれたのである。それが君と僕との最後の会話だったと思う。その後の君は大学に入りめちゃくちゃ髪色が派手な男友達とかとめちゃくちゃ絡んでるよね。よくストーリーで見るよ、インスタの。君の友達たちの髪色見てるとなんかサラダとか思い出すよ。美味しくなかった給食の、無駄に色とりどりな。抱かれてんのかな...。めちゃくちゃ...。抱かれてるだろうな...。めちゃくちゃ...。

 

甘酒今日のセンチメンタルBGM

ガガガSP はじめて君としゃべった

「誰かに笑われたって構わないのさ

君と喋れた事実が僕にはついているから」